チャットを活用した顧客コミュニケーション 〜 Twilio Conversations API
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アプリ内チャットやWebチャットは、顧客エンゲージメント構築において、大きなポテンシャルを秘めています。当社が2015年にリリースしたIP Messaging API (後にTwilio Programmable Chatと改称)は、信頼性の高いAPIとSDKを備えた、フル機能のクラウドホスト型チャットソリューションの先駆けでした。
以来、月間数千万人ものアクティブチャットユーザーが、Twilio上でコミュニティーの構築、顧客の問い合わせ対応、チャットを通してお互いにつながり合うなど、世界各地で交流しています。世界経済がコロナ禍により停滞する中、多くの開発者たちが、チャットなどのメッセージベースのチャネルを開発し、チームが各地に分散していても、顧客からの問い合わせに対応し、連携できるようにしました。チャットの急速な成長は、当社発表の「2021年度顧客エンゲージメント現状分析」においても実証されています。当レポートによると、今後12か月でライブチャットを導入すると回答した企業は、調査対象の3分の1以上になり、すべてのチャネルの中でも一番高い値を示しています。
コーディングはクリエイティブな作業です。APIを利用すれば、数行のコードで顧客との快適なコミュニケーションを構築することができます。APIは創造性を解放する力があります。将来にわたり長い期間利用できるアプリケーション、つまり新たなチャネルや消費者のニーズの変化に対応できるアプリケーションの構築を可能にします。
世界がネットワークで密接につながる中、特定チャネルに限定されたチャットソリューションを企業は顧客に強要すべきではありません。1000万人以上の開発者の意見をもとに、Twilioは次世代チャット向けAPIとして、Conversations APIをリリースしました。Twilioがこの対話型メッセージングソリューションで目指したのは、問題を全体的に解決し、開発者による新機能の追加構築を不要にすること。そして、消費者のニーズの変化に対応し続けることでした。(最後に挙げた、消費者のチャネルニーズを無視することは、顧客を喪うことを意味します。)
Conversations APIへのアップグレードにあたり、当社が特に力を入れたのは、開発者が想定するユースケースを支えるTwilio機能がProgrammable ChatからConversations APIへシームレスに引き継がれることでした。今回のアップグレードの主な内容は、会話管理を向上するステータス&タイマーなどの新機能や、iOS、Android、JavaScriptのクライアント側SDKの改良、HIPAA準拠、ネイティブグループテキスト送信などのマルチチャネル機能です。ネイティブグループテキスト送信は特に優れた機能です。
新しい選択肢
これまで多くの企業や開発者の成功を支えてきたProgrammable Chatに代わり、なぜ次世代APIであるConversations APIを発表したのかと疑問に思う方もいるでしょう。答えはある意味簡単で、お客様に選択肢を用意するためといえます。
どんなに優れたチャットアプリケーションでも、Webページにアクセスするか、専用アプリケーションのダウンロード(+プッシュ通知の有効化)の必要があります。バーチャルファーストへと移行する中、消費者が利用するチャネル数も増えており、昨年は3分の1以上の企業が新規デジタルチャネルを追加しました。以前は顧客にアプリのダウンロードを要求することも珍しくありませんでしたが、これからの時代で生きのびるには、企業は顧客に強いるのではなく顧客に合わせていくイノベーションが必要です。
多くのイノベーターが真の価値を見出したのは、マルチチャネルでの対話型サービスです。
カスタマーケアのユースケースでは、消費者が好むチャネルを利用しコミュニケーションできるようにすることが顧客満足度を向上させ、また、企業側ではWebやモバイルアプリ画面を活用しながら、業務の効率化とブランディングを高めることができます。調査において消費者の87%が、チャネル横断的な顧客対応を期待しており、すべてのインタラクションがバーチャルファーストになる中、企業には早急な対応が求められています。
コミュニティーのユースケースでは、ユーザー同士がチャットを利用し、特定の話題について語り合う際に、チャネルを選択できるようにすることがコミュニティーへの親近感が高めることに役立ちます。例えば、SMSなどのチャネルを使用しコミュニティーの内容を事前に理解できれば、ユーザーは安心してアプリをダウンロードできますし、また、スマートフォンを使用していないユーザーでもアクセスが可能になります。このユーザー獲得は堅実でありながら、アクティブユーザー化を促進する方法です。長期間ログインしていないユーザーや、一定期間非アクティブなユーザーとのエンゲージメント再構築にも有効です。
マルチチャネルとは、すべてのチャネルを常に使用するという意味ではありません。消費者のニーズが変化しても一貫性のあるサービス品質を、どのチャネルでも提供できるということです。
ゼロベース開発の新しいアーキテクチャー
消費者のニーズの変化という点では、トレンドだけでなく、基本的なニーズを確実に満たすことが必須です。これまでは、開発者は扱いづらいシステムとチャネルの橋渡し役を期待されました。先進の対話型サービスを構築するには、チャネル追加のためのサポート、統合ロジックの構築、ステータス管理、システム連携が必要でしたが、もはやこのような作業は時代遅れです。
当社がProgrammable Chatのアーキテクチャーをベースに、クロスチャネルメッセージング対応のTwilio Conversationsの構築に着手した目的は、開発時間を短縮し、新規チャネルを簡単にアプリケーションに追加できるようにするためです。チャネル間の複雑な要件、相違点を解消するため、他のメッセージングのユースケースで使用されているメッセージサービス機能を、SMS、WhatsApp向けTwilio Conversationsにも採用しました。特に重視したのは、APIの主要コンセプトをすべてのチャネルに適用することであり、このメリットは単なる結果の産物ではありません。
複数のチャネルを接続し、統制するのが、会話(Conversations)リソースです。会話リソースは、1つの部屋に例えることができます。何千人もの参加者が同時につながりますが、参加者それぞれで、好みのチャネルやユーザID等が異なります。
WhatsAppチャット、SMSを別々の部屋にするのではなく、1つにまとめ、自動的に参加者同士の会話をプロキシします。オペレーターや従業員が問い合わせにWebチャットから対応するカスタマーケアの場合でも、顧客はSMSやWhatsApp、アプリ内チャットから返信できます。ビデオイベントと組み合わせた大規模なオンライン会話も可能(TwilioのオープンソースのReactJSアプリなら数分で構築可能)です。参加者は各自好みのチャネルを選ぶことができます。
ユーザーの好みに合わせ、迅速に毎月数千万人規模のサポートを提供する性能や、拡張性と安定性は、開発に不可欠な要素と言えます。新たに登場するかもしれないチャネルを会話の手段に加え、アプリケーションの革新性や企業とユーザー間のコミュニケーションを将来にわたり支えることが可能となるのです。
未来のニーズに応える
Conversations APIのメリットは、チャットの活用だけではありません。未来のニーズに対応することも可能です。前進、挑戦あるのみです。Conversations APIをぜひご活用ください。
- テキストベースチャット対応の自社ビデオアプリの開発に、Twilio VideoとTwilio Conversationsを活用 (関連ブログ記事)
- Conversationsにおける、WhatsApp Business APIの使用方法 (関連ドキュメントサイト)
- Flask、React、Twilio Conversationsによる、マルチルームWebチャットアプリケーションの構築 (関連ブログ記事)