エアコン配達・設置の連絡を完全自動化! コールセンターへの問い合わせを75%削減

March 15, 2023
執筆者

ビックカメラ 田村様

「防火」と「消火」の観点からコスト削減

ビックカメラ田村氏: 家電小売業のマーケットは横ばいの状態が続いています。ビックカメラはグループ会社のコジマも含め、現在業界シェア2位の位置にいますが、日々、業界内で競争の圧力にさらされています。

 そこで当社では2022年6月に「DX宣言」を発表しました。デジタル技術をもって顧客体験の向上やコストダウンなどを目指し、巻き返しを進めています。

 私は現在、デジタル戦略部ビジネスソリューション室カスタマーコミュニケーションユニットで、コールセンターの企画・運営を担当しています。一般的に、コールセンターは外注されている会社が多いなか、当社では社内にその管理部門を置いています。理由としては、お客様の声をダイレクトに拾うことでシステムの投入に活かすことができたり、サービス改善や経営層への提言が行えたりする点が挙げられます。

 お客様からのお問い合わせ一件一件に対する「対応コスト」を減らしていくのも、我々の役割です。

 コスト削減には「防火」と「消火」という考え方があります。防火では、ECサイトの説明を充実させるなど、そもそもお客様からのお問い合わせが発生しないよう販売方法を検討します。消火は、マニュアルを整備したり、デジタルツールを導入したりすることで、発生した問い合わせに対して一件あたりの対応時間を短くすることで、コストを下げていくという考え方です。

 防火の観点から考えたとき、当社では「エアコン」に対する問い合わせが非常に多いことがわかりました。

 通常、お客様に店頭やECサイトで商品をお買い上げいただいた場合、お届けする日時を「○○日の午前中」「14時から16時」など、ご指定いただけます。

 ところが、エアコンは少しイレギュラーです。まず、設置に1時間は時間を要します。設置条件が厳しいご自宅の場合、2時間ほどかかるケースもあります。反対に、30分で済むこともあります。そのため、そのほかのお客様への配送・設置の兼ね合いもあり、ご購入いただいた時点ではお日にちしかお決めいただくことができません。

 お客様には当日の朝、工事を担当してくださるパートナー会社から直接ご連絡を差し上げていました。毎朝1件ずつ電話をかけるパートナー会社は、当然大変です。さらに、朝に電話をかけてもお客様につながらないことが多く、電話を取り損ねたお客様から「いつ来るのか」という問い合わせが、コールセンターに押し寄せていました。

 これはビックカメラに限った話ではなく、業界全体がこのような動きをしていました。より早く、より確実にご連絡できる方法はないか。LINE、メール、自社アプリなどさまざまなツールを検討した結果、携帯電話にほぼ100%搭載されており、プッシュ通知があるSMSを選択することに決定しました。

ビックカメラ 田村様

ノーコード・ローコードでスピーディーにプログラム開発

ビックカメラ木村氏: 今回、新たなシステムを導入するにあたって、以下のことを重視しました。

  1. コスト0円でトライアルができること
  2. 従量課金で利用した分だけ支払えること
  3. デモ作成が容易であること
  4. 多彩なツールがあり、各機能の連動性よいこと

 エアコンのピークは7〜8月です。私たちが本件に着手したのが5月。7月1日までにはサービスを開始したいという思いがあり、ノーコード・ローコードで簡単にプログラム開発ができるツールを探しました。また、エアコンの場合、夏場は問い合わせが多くても、それ以外の時期はある程度落ち着きます。定額ではなく、ツールを使った分だけ課金されるシステムが適切だと考えました。

 以上を踏まえ、エアコンのお届け時間の連絡を完全自動化するシステムを開発しました。システムの流れとしては、朝8時にRPAがお届け予定のお客様宛に自動でSMSを配信します。固定電話の方に対応するために、自動音声が流れるボイスシステムも搭載しました。配信・架電が完了したら、RPAがそれに対するログデータを出力し状況を確認します。

 リリース後にログを確認すると、自動音声電話はつながっていても、1秒で電話を切ってしまったお客様や、出られなかった方も一定数いることがわかりました。「不審な電話」と思われてしまった可能性や、誤って切ってしまったケースを考慮し、自動で再架電を行う仕組みもつくりました。

 その結果、SMSの到達率は99%。コールセンターに対する問い合わせは75%削減という結果を生むことができました。

 これまではいつ工事に来るのか不安に感じていたお客様に対し、お伺い時間を今までよりも効率的に伝わりやすい方法でお伝えすることで、ご安心いただくとともにコールセンターはもちろん、パートナー会社の負荷の軽減も実現できました。今後もお客様がビックカメラで楽しくお買いものをしていただける様々なサービスを支えるシステムを検討していきたいと考えております。

ビックカメラ 木村様