SMSマーケティングを社内プロジェクト推進する際の考慮ポイント

May 16, 2022
執筆者
レビュー担当者

smsMarketing2StakeholdersJP

この記事はBill Higbeeこちらで公開した記事(英語)を日本語化したものです。

マーケターは顧客エンゲージメントにSMSやMMS*1を積極的に活用しています。顧客はSMS等のテキストメッセージを好む傾向にあるため、これは当然の判断だと言えます。一般に、SMSメッセージの開封率は98%と言われており、そのうちの90%は受信から3分以内に開封されています。マーケティング関連のSMSメッセージに限定すると、SMSの平均開封率は82%と高く、URLを記載している場合の平均クリックスルー率(CTR)は36%となっています。

(*1 MMSは北米市場で利用可能なSMSの高機能版で、動画等のリッチメディアなどが扱える点に特徴があります。)

入念に作成されたSMSマーケティングキャンペーンを実施することにより、顧客のロイヤルティを強化し、企業の成長を促し、測定可能なROIを達成できます。その好例となっているのがKlaviyo社です。Klaviyoは顧客のマーケティングを支援する企業です。同社の顧客は、SMSコスト1ドルあたり24ドルのROIを達成しています。また、オンライン不動産取引会社のHomeFinder.comは、SMSメッセージを受信した顧客は、Eメールを受信した顧客と比較して、レビューを書く可能性が10倍高いと述べています。

これだけのメリットにもかかわらず、SMSマーケティングプログラムに対する社内関係者の支持を得るのは困難な場合があります。このブログ記事では、社内関係者の支持を獲得する方法について説明します。

SMSマーケティングのプレゼンテーション計画

プレゼンテーションを計画する際には、対象者を意識することが重要です。支持が必要になる関係者を挙げてみると、次のようになります。

  • 開発者とソフトウェアエンジニア: 社内アプリケーションへのSMS送信機能の組み込みを担当します。
  • 製品マネージャー: 一般に、成長のためのロードマップ作成、その実施、事前に設定した期待値(ROI)の達成確認を担当します。
  • 情報テクノロジー(IT): SMS送信機能について、実装の立場から、あるいは、他のシステム(音声など)に干渉しないように監視する立場から関わります。
  • チャンピオン(推進のキーマン): CMOとVPは、予算を管理し、チーム規模、テクノロジー投資、キャンペーン支出などの各種コスト、そうしたコストの対価として獲得できる事業成果(金額)を把握します。

まず、SMS戦略をすでに導入しているかどうかを調べます。導入している場合は、SMSマーケティングに対する支持も比較的容易に獲得できるはずです。以下の重要な質問を行います。

  1. 現在、当社はSMSメッセージをどのように使用しているか。
  2. どのプロバイダーのSMSメッセージシステムを使用しているか。パッケージ型のソフトウェアソリューションなのか、それとも自社仕様に合わせてカスタマイズ使用しているものか。
  3. SMSメッセージで使用する電話番号の種類は何か。たとえば北米の場合、ショートコード、フリーダイヤル、10桁のロングコードなどの種類があります。
  4. 現在利用しているプロバイダーの継続利用を推奨するか(+その背景)。
  5. 新たな追加契約を締結することなく、マーケティング部門としてそのSMSメッセージシステムを利用することができるか。可能ならば、困難で時間のかかる契約交渉・締結の負担がなくなります。
  6. 現在のプロバイダーの価格体系。通常は、サブスクリプションモデル(回線数またはユーザー数に基づく料金)や従量制モデル(メッセージ送受信数に基づく料金)などです。
    • 注記: 従量制モデルには、いくつかのメリットがあります。使用した分だけ料金を支払うため、少額の予算から開始し、ROIを実証してから使用量を増やすことができます。また、マーケティング部門がSMSメッセージシステムを使用することで、社内全体の使用量が増加し、ボリューム割引を受けられる場合もあります。

社内関係者からの反論への準備

プレゼンテーションの作成に着手する前に、マーケティング用のSMS戦略に対する社内関係者からの一般的な反論に備えます。

惰性 - 今のままで問題ない

重要なのは、惰性からの脱却を促すことです。

そのためには、まず切迫感を持ってもらいます。SMSマーケティングをまだ実施していない場合は、競合他社に後れを取っていることを明確に伝えます。2020年時点で、70%の企業が顧客や従業員とのコミュニケーションにSMSメッセージを活用しており、55%の消費者が企業からSMSメッセージを受信するために登録しています。

次に、SMSマーケティングの重要性を、主観的な意見としてではなく数字に基づいて実証します。TwilioのSMSマーケティングのROI計算ツールを使用して、簡単な費用対効果検討書を作成してみましょう。入力内容を貴社のデータに置き換えるだけで、数分でROIが判明します。

SMSマーケティングにより、既存のチャネル(メールや広告など)と比較して、どれだけの増加や追加が見込めるかを伝えます。たとえば、1,000人の消費者を対象としたSMSマーケティングプログラムを作成する場合、「その1,000人のうち、何パーセントは既存のチャネルでも獲得できるのか?」といった反論を受けることが考えられます。

予算とマーケティングテクノロジースタックの拡大に伴うコスト増

SMSマーケティングに関するROI計算ツールの算出結果を手元に用意しておきます。

次に、「crawl-walk-run(ハイハイ〜歩く〜走る)」アプローチを提案します。すなわち小規模に開始し、SMSマーケティングの実際のROIを実証してから、拡大するのです。このアプローチは、従量制料金のプロバイダーを利用する場合は特に効果的です。米国の場合、SMSの1件あたりのコストは0.01ドル未満です。つまり、1,000件のテキストメッセージの送信コストは10ドル未満です。簡単な計算を行うだけで、次のような説得力のある主張を展開できます。

「当社の場合、購入1回あたりの平均収益は90ドルです。つまり、9,000件のテキストメッセージを送信し、メールや広告だけでは獲得できなかった顧客を1人獲得できれば、元が取れます」

要するに、SMSマーケティングにより多大(そして測定可能)なROIを達成できるということです。SMS戦略を開始するためのコストより、SMS戦略を採用しない場合の事業リスクの方がはるかに大きいのです。

リソース不足

第3の反論は、SMSマーケティングを活用するためのリソース(人材や経験など)の不足です。この反論への対応方法をいくつか紹介します。

  • SMSマーケティングを活用するための専門知識: TwilioのSMSマーケティングeBook(英語)をご覧ください。全体的な戦略策定、同意の取得、顧客ジャーニーの各段階における効果的なキャンペーンの作成など、幅広い内容について取り上げています。
  • 時間とスタッフ: ROIに焦点を当てながら、SMSマーケティングを優先すべき理由を断固として主張します。そして、「リソースの確保に必要な手順」について質問します。
  • 信頼とコンプライアンス: SMSを使用して、顧客が必要としている情報を提供し、強力な顧客関係を構築可能なことを社内関係者に伝えます。TwilioのSMSマーケティングeBook(英語)を参考に、顧客の同意を取得する方法や、適切なタイミングで、適切なチャネルに、適切なメッセージ(顧客ごとにパーソナライズした魅力的なメッセージ)を送信する方法について説明します。

プレゼンテーションの作成と実施

最終目標は、承認、予算、そして意思決定に関わるすべての関係者の支持を獲得することです。そのための5つの手順を紹介します。

手順1: マーケティングにおけるSMSの使用目的を決定する

SMSにより、どのようにマーケティング戦略を強化し、ビジネス目標を達成できるかを列挙します。たとえば、ロイヤルティ特典プログラム、特別キャンペーン(例: ブラックフライデー)、カゴ落ち対策などに、どのようにSMSを活用できるかを説明します。

手順2: 主要成功基準を定める

次に、SMSマーケティングの成功基準の一覧を作成します。また、どのグループが影響を受ける可能性があるかを関係者に伝えます。以下は一般的な例です。

  • テクノロジースタックの統合: 既存のCRM、顧客データプラットフォーム(CDP)、マーケティング自動化(MA)ツールなどと統合し、次の点に利用できるか。
    • 視認性: コミュニケーションチャネルを網羅して、顧客情報を一元的に表示し、一貫性を確保し(正しい氏名を使用するなど)、プラスの顧客体験を提供できるか(過剰なメッセージ送信を控えるなど)。
    • 追跡性: 結果の測定と報告を効果的に行えるか。
  • 配信到達性: 優れた配信到達性(意図した受信者にメッセージが届く割合)と配信到達性メトリックスに関する透明性(レポート作成)により、キャンペーンを最適化し、ROIを数値化できるか。
  • 拡張性: SMSマーケティングをXX年以内に、YYか国で展開し、ZZ件にまで拡大できるか。
  • 信頼とコンプライアンス: 規制要件を遵守し、既存顧客の信頼を獲得するためのリソース、プロセス、直接的なサポートはあるか。
  • タイムライン: 期限内に導入できるか。期限は導入目的によって異なる場合があります。たとえば、「crawl-walk-run(ハイハイ〜歩く〜走る)」方式のソリューションの場合、迅速にテストできる必要がありますが、CDP統合という長期的な価値もあります。
  • 導入リソース: 速やかに導入して、継続的に成功できるよう、社内チームの合意を獲得できているか。

手順3: プロバイダーの最終候補リストを作成する

この手順で作成するリストは、あくまでも貴社の主要成功基準を満たすであろうプロバイダーの候補をいくつか列挙したものです。この時点では、徹底的な調査は行わず、関係者へのプレゼンテーションにより、最終決定が必要になったときに、リソースやプロセスへと誘導します。

手順4: 簡単な投資対効果検討書を作成する

前述のとおり、TwilioのSMSマーケティングのROI計算ツールに貴社のデータを入力するだけで、ビジネス成果を数分で算出できます。

ROI計算ツールで結果を算出したら、混乱を避けるため、プレゼンテーションでは最も重要な数字のみ取り上げます。詳細な分析結果を記載したリンクやファイルは、補足資料として提供します。

最後に、以下の点を明確に伝えて、算出結果に対する疑念を解消します。

  • 分析が、自社のこれまでのマーケティング成功率に基づいている(該当する場合)こと。
  • 分析が、SMSマーケティングの業界平均に基づいている(該当する場合)こと。
  • ROI算出結果は、他のチャネル(メールや広告など)を除いた、SMSマーケティングによる販売・収益に基づいていること。
  • SMSマーケティングプログラムの結果を効果的に報告するためのレポートを作成できること。

手順5: 社内関係者向けにSMSマーケティングのプレゼンテーションを実施する

いよいよプレゼンテーションを実施します。説得力のあるプレゼンテーションを行うためのヒントをいくつか紹介します。

【スライド1】タイトルスライド

いきなり本題に入るのではなく、このスライドを表示している間に、関係者の関心を高めて、キーマンとしてSMSマーケティングに熱意を持っていることを示します。

【スライド2】アジェンダ

プレゼンテーションを円滑に進めるために、アジェンダを明確にします。たとえば、スライド5で財務について取り上げることがアジェンダで明確になっていれば、スライド4で財務に関する質問を受けることはありません。

【スライド3】SMSマーケティング: 概要と活用方法

このスライドでは、プレゼンテーションの相手を念頭に置きながら、SMSマーケティングの活用方法を説明します。

【スライド4】なぜ今なのか

惰性に対抗するための非常に重要なスライドです。まず、次のように述べます〜「次のスライド5では、SMSマーケティングによりどれだけのROIを達成できるかを示す財務概要をお見せします。しかし、その前にまずはこちらをご覧ください」。

そして、業界の統計情報を見せて、競合他社がSMSマーケティングをどのように活用しているかを紹介します。より有意義な顧客エンゲージメントを通じて顧客関係を強化することの重要性を伝えます。大量のマーケティングメッセージが送信されている現在、他とは一線を画したマーケティングがビジネスの成否を左右することを伝えます。

【スライド5】財務概要

ここでも、関係者にとって最も重要な数字のみ取り上げ、財務の概要を示します。詳細な分析結果を記載したリンクやファイルは、補足資料として提供します。

【スライド6】主要成功基準

このスライドに関する情報はすでに作成しました(手順2)。重要なのは、その情報の見せ方です。コツは、適切な量の情報を提示することです。情報量が多すぎると、相手は混乱したり、興味を失います。情報量が少なすぎると、相手はあなたがサポートを必要としていることを十分に理解してくれません。また、ここで使用したスライドを相手が同僚に見せる場合もあるため、見ただけで内容を理解できるようなスライドにしましょう。

【スライド7】次のステップ

このスライドは企業ごとに異なります。貴社のリーダーは、期限を記載したカレンダー表示を好むか、プレゼンテーション相手は決定権を持っているか、返事をもらうには同僚との相談が必要か、等々です。

それぞれの状況に応じて、次のステップをスライドに明記します。曖昧にしてはなりません。自分が必要としているものを相手に伝えます。相手が必要としているもの(より詳しい情報など)を尋ねます。いつまでに回答が必要かも明確にします。

【スライド8】質疑応答

プレゼンテーションのリハーサルを行い、時間配分を事前に把握し、質疑応答のための時間を残しておきます。関係者にメリットをはっきりと理解してもらい、プロジェクト推進の協力を得るためには、この質疑応答の時間が重要です。

【付録】

付録のスライドは、プレゼンテーションでは紹介しきれなかった詳細情報を記載するのに最適です。また、プレゼンテーション資料が出席者以外に転送される場合もあるため、詳細説明を記載しておくためのスライドとして利用するのも効果的です。

プレゼンテーションを成功させるための鉄則は、解決しようとする課題と聞き手との関係性を示すこと、そして「聞き手にとってのメリット」を伝えることです。迷ったら、とにかく数字とROIに焦点を当てましょう。企業の意思決定者にとって最も重要なのは、収益の増加です。

SMSマーケティング戦略を今すぐ策定

SMSマーケティングにより、顧客のロイヤルティを強化し、企業の成長を促し、測定可能なROIを達成できます。SMSマーケティングの詳細については、TwilioのSMSマーケティングeBook(英語)をぜひお読みください。SMSマーケティング戦略の全般的な策定、同意を取得するコツ、顧客ジャーニーの各段階における効果的なキャンペーンの作成についてご確認いただけます。

SMSマーケティングプログラムを提案・推進することにより、提案者自身も社内での存在感を高め、キャリアを築いていくことができる点も重要です。もしよければ、成功体験をお寄せください!

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Bill Higbeeは、Twilioのシニア製品マーケティングマネージャーです。API、SaaS、通信などのテクニカルマーケティング職に20年以上にわたって従事しています。主な職務は、顧客エンゲージメントの強化を支援することです。プライベートでは、スキー、ゴルフ、アウトドアなどを趣味としています。Bill Higbeeには、whigbee@twilio.com または linkedin.com/in/billhigbee までお気軽にお問い合わせください。