Appleによるメールプライバシー保護について
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更新日: 2021年9月2日
2021年6月17日に最初にこの記事を投稿してから、Appleのメールプライバシー保護に関する詳細な情報が少しずつ入手できるようになってきました。メールプライバシー保護がメール送信者にどのような影響を与えるかについての最新情報はこちらをご覧ください。今後も情報が入り次第、本記事を更新していきます。
2021年6月7日に開催されたAppleのWWDCカンファレンスにおいて、Appleはメールプライバシー保護 (MPP: Mail Privacy Protection) を発表しました。メールプライバシー保護に関するアナウンスは、ユーザーが自分のデータをコントロールできるようにするためのAppleによる大きな取り組みの一環ですが、メール送信者にとっていくつかの影響があります。Appleのメールプライバシー保護がお客様のメールプログラムにどのような影響を与えるかを理解するために、メール配信の専門家に最も緊急性の高い質問に答えてもらいました。
Appleのメールプライバシー保護のアナウンスとは?
メールプライバシー保護は、iOS 15のAppleデバイス設定にある新しいオプションです。iOS 15をダウンロードしたユーザーが初めてAppleのアプリ「メール」を開くと、「メール」を使用する際に共有するデータを選択するプロンプトが表示されます。ユーザーは、IPアドレスや位置情報を隠すかどうか、あるいは画像キャッシングを有効にしてメール送信者による開封追跡を匿名化するかどうかを選択することができます。
Appleのメールプライバシー保護はメール送信者にどのような影響を与えますか?
開封追跡を匿名化することにより、メール送信者は、MPP機能を有効化した受信者が自社のメールにどのようにエンゲージしているかを完全に把握することができなくなります。メール送信者は、クリック追跡を行うことはできますが、開封追跡データがなければ、エンゲージメントのない連絡先を認識したり、メールキャンペーンを評価することが難しくなります。
Appleのメールプライバシー保護はいつ正式に有効となるのか?
iOS 15は2021年9月にリリースされると思われます。また、時間経過とともにiOSとMPPの採用が増えていくと考えられます。
MPPはエンゲージメントデータにどのような影響を与えるのか?
いずれかのデバイスのApple「メール」アプリでメールアカウントを設定し、そのデバイス上のiOS 15でMPPを有効にすると、受信者のエンゲージメントデータに対する影響が生じます。
MPPが全体のエンゲージメント数に与える影響を予測することは困難です。Appleの「メール」アプリでメールボックス設定がされている場合、そこに送信されたメッセージはMPPによって「開封」される可能性があります。つまり、gmail.comやyahoo.comのメールボックスであっても、Appleの「メール」アプリに接続されていれば、誤った開封追跡となる可能性があります。受信者が普段GmailアプリやChromeブラウザを使ってメールを閲覧している場合でも、メールボックスが「メール」アプリで設定されているだけで、“機械的”な開封が発生する可能性があります。
MPPはどのように開封を匿名化するのですか?
当社ではこの新機能を積極的に調査・テストしており、iOS 15のリリースに合わせて、引き続き調査結果をお伝えしていきます。当初の調査では、MPP対応の受信者に対するメールの扱いはまちまちでした。あるメッセージでは、匿名化された形ですべての画像が取得されました(=すべてMPPが効いた形での開封でした)。また、一部のメッセージでは、一部の画像しか取得されず、従来通りの動作をするものもありました(=MPPが効いた形の開封とそうでない開封のミックス)。
受信者がこの機能を有効にしているかどうかを判断する方法はありますか?
いいえ、正確性を伴う方法はありません。初期テストでは、これらの開封は非常に一般的なユーザーエージェントと一般的なIPアドレスから来ることがわかっていますAppleの「メール」アプリのMPP機能を。誰が使用しているかを推測することはできるかもしれませんが、それはあくまでも推測に過ぎません。
Twilio SendGridのボリュームのうち、Apple Mailアプリで開かれる割合はどのくらいですか?
Twilio SendGridのデータでは、Appleの「メール」アプリでの開封は全体の7.7%となっています。またLitmus社の報告では、Apple iPhoneのメールクライアントの市場シェアは37%、Appleの「メール」アプリの市場シェアは10%となっています。この割合は、他のメールサービスプロバイダーとの会話の中でさらに変化します。いくつかのプロバイダーは、Appleの「メール」アプリのボリュームが30%にもなると考えています。
ユーザーエージェントの追跡は非常に難しいため、このように幅広いデータが得られるのだと思われます。また、Appleの「メール」アプリを使用している受信者の割合は、企業ごとに多少異なります。開封率に注目し、今後数ヶ月の間にどのように変化するかを確認することで、連絡先リストにどのくらいの「メール」アプリユーザがいるのかを把握することが重要になります。
「メール」アプリユーザーのエンゲージメントを基にした送信宛先一覧の管理はどうあるべきしょうか?
開封追跡ではなく、クリック追跡を利用することが最善の方法だと考えています。ただし、クリックイベントは開封イベントよりも頻度が低いため、クリック追跡のみを使用した場合、開封追跡を使用した場合よりも多くの購読者がエンゲージメントの“低さ”により宛先一覧から削除されることになります。
エンゲージメントの判定に関する詳細は、以下のブログ記事をご確認ください。
「Building Your Business Case for an Email Sunset Policy」(英語)
「How to Create and Execute an Email Sunsetting Strategy」(英語)
他のメールボックスプロバイダーやOSが同様のアプローチを採用した場合はどうなりますか?
送信者やTwilio SendGridのようなメールサービスプロバイダーは、エンゲージメントを追跡するためのアプローチを調整する必要があります。メールチャネルのエンゲージメントを追跡するために開封率を使用することは、何十年もの間、業界標準となってきました。
もし送信者がエンゲージメントデータの大部分を失うことになれば、私たちは新しいアイデアや、どの受信者が私たちのデジタルコミュニケーションを実際に望んでいるかを判断する新しい方法を考える必要があると考えます。例えば:
- 開封データを無視し、クリックデータのみに頼る
- エンゲージメントのダイレクトデータ(例: 開封やクリック)を完全に排除する
- 定期的に再確認/再エンゲージメントキャンペーンを行う
- メール配信の継続を確認するための代替チャネル(SMS、プッシュ通知、ビデオ、ボイス、アプリ内など)の活用
進化する業界
メール業界の進化に伴い、Twilio SendGridはプライバシーや規制の変化に対応するためのベストプラクティスや各種示唆を提供していきます。このFAQ一覧については追加のデータポイントや示唆が得られた段階で更新の予定ですし、企業がこの変化に備えるための方法に関する別の記事も検討してまいります。
なお、メールのプライバシー保護、配信に関する問題、メールのパフォーマンス全般についてのご相談は、メールの専門家チームまでお問い合わせください。