Twilio SIGNAL 2021 イベント〜製品アナウンスの振り返り
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SIGNAL 2021を振り返るブログシリーズを、第1回(Twilio SIGNAL 2021 カンファレンスの超速報)、第2回(Twilio SIGNAL 2021 〜 基調講演の振り返り)、第3回(SIGNAL TVをMCの立場から振り返る)と投稿してきました。第3回目までで、カンファレンスイベント期間中のプロダクト系のアナウンスの幾つかについて既にカバーしていますが、今回は未だカバーしきれていない以下のアナウンスについて触れていきたいと思います。
- Twilio Verifyの機能強化を3点(WhatsApp、TOTP、BYOT)
- Twilio Video Insights機能
- Twilio SendGrid EmailのDeliverability Insights機能
- プログラム「CodeExchange for Good」
Twilio Verifyの機能強化を3点(WhatsApp、TOTP、BYOT)
先ずTwilio Verifyについてです。Twilio Verifyは二要素認証をマルチチャネルで実現するマネージド型のアカウントセキュリティー系プロダクトです。プロダクト全般としてはこれまでも正式リリース提供しています。二要素認証におけるワンタイムパスコード(OTP)生成・管理のロジックが自社提供可能な場合、Twilio Programmable SMSサービスと組み合わせることでエンドツーエンドで二要素認証機能を自社提供できます。しかし、そもそもOTPの生成・失効管理・無効化処理などが面倒でプロバイダ側のロジックに頼りたい、安定的に・タイムリーにOTPを配信しユーザー体験を損ねないようにしたい等の背景から、Twilio Verifyというマネージド型サービスを検討されるお客様が急速に増えています。
それでは、Twilio Verifyに関する機能強化の1つめ、WhatsAppへの対応について説明します。Twilio VerifyでOTPを送信する際、マルチチャネルの側面から、これまで、電話・SMS・Eメール・プッシュへ対応していました。今回新たなチャネルとしてWhatsAppに対応し、二要素認証のOTPをWhatsAppを介して送信することが可能となります。メッセージングアプリとしてWhatsAppが主に利用される地域(例: 東南アジア、南米)で威力を発揮すると思います。また、二要素認証というユースケースに限定されるため、WhatsAppによる通常のメッセージ処理における様々な考慮点(例: テンプレートの事前承認)の必要性がなくなり、利便性が高まります。なお、パイロットリリースですので例えば当社ウェブサイト上で広く告知等はしておりません。ご興味がある場合、弊社営業までお問い合わせください。
次に2つめ、上記WhatsAppへの対応と同様にマルチチャネルの一環として捉えられますが、TOTP(Timed OTP)への対応について説明します。TOTPはソフトトークンとも呼ばれ、例えば30秒毎に失効・再生成されるOTPです。先ず、TOTPと聞くと、Twilio Verifyのスマホアプリがリリースされ、同アプリ上にTOTPが表示されるようなイメージを持たれるかもしれませんが、本対応はこういったイメージとは異なります。ちなみに、Twilio Verifyの先駆プロダクトであるTwilio Authyアプリではこのような実現形態のTOTP対応を行っております。
Twilio VerifyにおけるTOTP対応では、TOTP生成の「種」(ファクターと呼ばれます)を生成するAPIが提供され、このファクターをTwilio AuthyやGoogle AuthenticatorのようなID認証系のスマホアプリにQRコードもしくはリンク経由で読み込ませることで、同スマホアプリ上にTOTPが表示され、利用可能となります。TOTPの主な利用用途は、i) 他のチャネルでOTPを送信する運用のバックアップで用いる、ii) 通信の接続性が容易に得られないような状況(例: 地下深くのサーバールーム)でご利用いただく、となります。SIGNALイベント直後はパイロットリリースでしたが、本ブログ投稿時点でパブリックベータリリースとなっておりますので、ぜひ積極的に利用をご検討ください。
最後に3つめ、Twilio VerifyのBYOT(Bring Your Own Template)対応を説明します。Twilio VerifyにおいてOTPを送信する際のメッセージ内容を、ブランドやユースケースを意識して若干カスタマイズすることができる機能となります。Twilio Verifyの前提は二要素認証となるため、際限ないカスタマイズは(特にSMS送信時の配信性を担保する意味から)趣旨が相入れません。 BYOTを利用すれば、Twilio Verify共通のメッセージテンプレートではなく、配信性を保てる範囲でカスタマイズしたメッセージテンプレートを使用できるようになります。これにより、ブランドやユースケースに応じたOTP送信が可能となり、OTP受信者によるコードへの円滑な反応が期待できます。利用にあたっては、当社サポート部門にケースを起票いただき、ご希望のメッセージテンプレートを提出いただきます。キャリアとの間で行う承認作業を当社側で代行し、キャリアによる承認が得られた段階で、テンプレートIDとともに、承認済みテンプレートをお客様にお戻しします。お客様は最終的に、Twilio VerifyにおけるOTP送信のAPI実行の際に所定のテンプレートIDを指定します。こちらもパイロットリリースですので、ご興味がある場合、弊社営業までお問い合わせください。
Twilio Video Insights機能
さて、Twilio Verifyを離れ、次はTwilio VideoサービスのVideo Insights機能について触れたいと思います。Video Insights機能は、Voice Insights機能やMessaging Insights機能等、Twilioの他のコミュニケーションサービスのダッシュボード系機能の流れを組んでいます。このVideo Insights機能を、Twilio Video向けにビデオセッションに関する知見を提供するダッシュボード機能として開発・パブリックベータリリースしました。
ビデオセッションは、他のメディア(コミュニケーション)と異なり、起動時にカメラデバイスやサウンドデバイスを正しく捕捉できず、ビデオセッションが円滑に開始できないことがあります。また、ビデオセッションがローカルコンピューター上で開始された後も、自宅等のネット環境が十分でなく、クラウド上のビデオサービスと正しく接続できない、接続が正しく行われた場合でもエンドツーエンドでのスループットが十分でなく画質音質に劣化が生じることもあります。このように、ビデオセッションに関するユーザー体験はやもすると劣化しがちで、ここに焦点をあてるダッシュボード機能は重宝されるものと考えています。
具体的には、ビデオセッションを構成する主要素であるRoomsリソースやParticipantsリソースに焦点をあてたダッシュボード(レポート)機能にくわえ、各種イベントデータを処理する中でインフラ側で検出される潜在的な異常にハイライトを当てる機能も提供されます。さらには、ビットレートやパケットロス等の品質メトリクスに関するグラフ化機能も提供されます。これらを包括的にご利用いただき、ビデオセッションのユーザー体験の向上にお役立ていただけるものと考えています。なお、Video Insightsの表示データにはデータ保持期間(対象のレポートにより2〜14日)の概念が存在することにご留意ください。
最後に捕捉として、Video Insights機能そのものではありませんが、ビデオは特に品質が重要になってくるという文脈の中で、SIGNALイベントの数ヶ月前から、同様の狙いをもった機能リリースやサンプルアプリの提供を積極的に行っておりました。以下、併せてご確認ください。
- Video Room Monitor(Roomリソースの状況を準リアルタイムに監視)- ブログ記事「Accelerate Your Development with the New Video Room Monitor, Now in Beta」(英語)
- Video Diagnostics Sample App(Roomリソースの診断系サンプルアプリ) - ブログ記事「Help Your Users Help Themselves with the New Video Diagnostics App, Now in Beta」(英語)
- Network Bandwidth Profile API performance improvements for multi-party applications(ネットワーク帯域やCPU利用率等に焦点をあてたプロファイリングAPI;特に複数人参加のシナリオ) - ドキュメントページ「Using the Network Bandwidth Profile API」(英語)
- Video Log Analyzer API(ログ分析系のAPI)- ブログ記事「Getting to Know Video Log Analyzer」(英語)
Twilio SendGrid EmailのDeliverability Insights機能
次に、Twilio SendGrid EmailサービスのDeliverability Insights機能について触れます。「上述のVideo Insights機能の流れを延長して解釈すればいいんだろうな、そのEメール版だろうな」と思われた読者の皆さま、そのとおりです!Eメールは、送信後に複数種類の顧客エンゲージメントが発生する点においてユニークです。(例: Delivered(配信)、Open(開封)、Clicked(クリック)、Spam(スパム)、UnSubscribed(購読停止))よって、この顧客エンゲージメントを丁寧にレビューし、しかるべき対応アクションを取ることが重要になります。
Twilio SendGrid Emailサービスにおいては、従来より管理ウェブ画面内の「Stats」という箇所でレポーティング機能を提供していましたが、Deliverability(配信性)に焦点をあてたダッシュボード機能を今回パブリックベータリリースしました。
大きく3つのサブ機能で構成されており、1つめは、メールボックスプロバイダ毎に細分化されたデータの提示機能となります。顧客エンゲージメントの各種データポイントは、メールボックスプロバイダ毎に異なる傾向を取りがちですので、このデータの細分化機能が提供されることは、観測された事象に対する背景を追求する上で重要になってきます。2つめは、データポイントに対するツールチップヘルプの提供となります。開封率が極端に低い状況など、焦点を当てなければならない事象に対してどのような背景が考えられるのか、どのような対処を取ることが求められそうか、メール配信プログラムに関する専門性をもった当社コンサルタントが提供しそうなアドバイスを予めテンプレート化し、ツールチップとしてダッシュボード画面上に惜しげもなく提示します。3つめは、Bounce Classifications(バウンス理由の分類)レポートです。Eメールで利用されるプロトコルSMTPのレスポンスコードは何百とも何千とも言われますが、これらをダッシュボードの読者が識別することには困難が伴います。大きく7種類に大分類し、観測されたSMTPレスポンスをこの7種類に分類して表示することで、傾向を容易に理解できるようにします。
本機能はパブリックベータリリースですので、SengGrid Email APIあるいはSendGrid Marketing Campaignsのどのアカウントプランの方でも無償でご利用になれますので、ぜひご利用ください!(Bounce Classificationsレポートについては、Email APIのProプラン以上、Marketing CampaignsのAdvancedプラン以上でご利用可能です。)
プログラム「CodeExchange for Good」
最後に、CodeExchange for Goodというプログラムについて触れたいと思います。Twilioのサービスは多くの場合APIを通してご利用いただくもので、コーディングを伴います。一方で、サービスを多くの方々にご理解・ご利用いただくためにサンプルコードとして提供し、開発者が関連のパラメータを2、3設定して「デプロイ」ボタンを押すことで、サービス機能を簡単にお試しいただける機構をCodeExchangeとして、従来からお届けしておりました。今回、社会情勢などをふまえ、社会的インパクトを伴う種別のサンプルアプリを整備し、「for Good」という追加選択肢としてお届けすることになりました。コミュニケーション・顧客エンゲージメントが市民の役に立つ状況は幾つもあるものと思いますので、そういったユースケースへのTwilioサービス適用を検討する際に、ぜひご活用ください。
本ブログをお読みいただき、ありがとうございました。次回第5回目は、ブレークアウト講演のうち、お客様事例のご紹介を行うものを幾つかカバーする予定です。また次回、第5回にてお会いしましょう!