Twilio Emailを数字で見る〜'21年秋冬ホリデーシーズン
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11月末の米国のホリデーシーズンを振り返る時期になりました。Eメールの世界では、このホリデーシーズン(ブラックフライデーとサイバーマンデー)は、スポーツの世界のワールドカップ、スーパーボウル、スタンレーカップ、ワールドシリーズ、オリンピックなどが同時並行で実施されるような規模の出来事(あくまでも例えです 😁)として捉えられます。2021年のホリデーシーズンは2020年に比べれば、人びとのショッピングに対する期待度の点で確かに改善されていると言えますが、パンデミック前の2019年とは比べものになりません。とはいえ、2019年から今年2021年のホリデーシーズンにおいて一貫しているのは、顧客を惹きつけ、ホリデーショッピングシーズンを盛り上げる手段として、Eメールに驚くほど依存していることです。
2021年の配信性能および経年比較
Twilio SendGridにおけるEメールトラフィックの処理量は、今年2021年も大幅に伸長しました。Twilio SendGridプラットフォームはブラックフライデー(BF)に約68億通、サイバーマンデー(CM)に70億通超のEメールを処理しましたが、これは2020年からの対前年比(YoY)で各々16.9%、22.2%の伸びとなっています。Twilio SendGridプラットフォームは、1時間あたり5.3億APIリクエストという再繁時バーストレートを維持しながら、優れたパフォーマンスを発揮しました。
過去、Eメールの将来について多くのコメントがなされ、例えばコラボレーションツールがEメールの死を告げるものと、そしてソーシャルメディアはEメールを葬り去るものとされてきました。しかし、Eメールが幾度となく証明してきた事実は、インターネット発展の当初から存在するこのコミュニケーションチャネルが健在であるだけでなく、ますます繁栄しているということです。Eメールに関するこれらのコメントが見逃しているのは、新しいサービス、フォーラム、プラットフォーム、ネットワークが立ち上がる際、アカウント作成、取引、パスワード回復などのシーンで、他のコミュニケーションチャネルに加えて、Eメールが依然として活用されているということです。Eメールに関しては、「Eメールか、新しいチャネルか」ではなく、常に「Eメールと、新しいチャネル」なのです。
(日本語記事上の補足: 横軸〜Twilio SendGridの創業された2009年以来かつ今年2021年まで、縦軸〜Eメールの配信ボリューム(20/40/60/80億通)、青色〜BF、赤色〜CM)
2009年から2021年までの11月中の配信量を振り返ってみると、文字通り、Twilio SendGridのメール配信量がより多くのマーケティング・セールス系のメールを反映するようになったことが分かります(以下図を参照)。SendGridが2009年に設立されたとき、それはトランザクションメール(一般的なお知らせ系メール)のプラットフォームとして構築されました。しかしTwilio SendGridを活用する開発者の皆さんは、SendGridのプラットフォームがトランザクションメールだけに限定されるにはあまりにも強力であると判断し、カスタマージャーニー中に発生するあらゆる顧客コミュニケーションニーズにEメールAPIを結びつけるようになりました。それは全くの偶然ではなかったと言えます。以下図に示されるように、1週間の間に通常の送信の山(主に平日)と谷(主に週末)を見ることができ、ブラックフライデーとサイバーマンデーの箇所で毎年熱狂的な盛り上がりを見せていることが分かります。
(日本語記事上の補足: 横軸〜11月1日から30日までの日付け、縦軸〜毎年11月のEメールボリューム(20/40/60/80億通)、色のタグで2009年〜2021年を対比)
Apple社のメールプライバシー保護機構(通称MPP)
2021年にメールエコシステムに起きた最大の変化は、BIMI(認証済みメールにブランドロゴを添付するための規格; Brand Indicators for Message Identification)の他には、Apple社のMメールプライバシー保護(Mail Privacy Protection)の導入(ブログ記事 英語版 & 日本語版)でした*。iOS15**でこのロールアウトが行われて以来、私たちは擬似的な開封イベントの影響を監視・測定してきました。例えば、キャッシュのシステムは、メールクリエイティブの上部にあるスプラッシュグラフィックから、同じクリエイティブの下部にあるトラッキングピクセルまで、すべてをダウンロードしています。
(*ブログ記事「Appleのメールプライバシー保護(MPP)に備える!」もご確認ください;
** iPadOS/macOSでも同様に、最近のアップデートで導入されています)
トラッキングピクセルはメールマーケティングの定番でしたが、送信されたメールのかなりの部分が匿名で開封されているため、擬似的に開封したのか人間が開封したのかがわからず、その効果が疑問視されつつあります。あるメール対して匿名のインタラクションがあったとして、そのレベルの意図シグナルに基づいた戦略を正当化することは難しいのです。
マーケティング担当者がこのような匿名の開封をセグメント化して無視しやすくするために、Twilio SengGridではApple Machine Open Indicatorの機能を発表しました。匿名化されたエンゲージメントが増加しているため、マーケターは意図やエンゲージメントを判断するために別の方法を模索する必要があります。当社の観測によると、ブラックフライデーにおける擬似的な匿名の開封率は40%強、サイバーマンデーでは40%弱でした。これは、Apple社のモバイルデバイスでメールを読む受信者の間でこの機能の有効化がかなり浸透していることを示しています。(Appleのデバイス上のネイティブメールアプリ「メール」でGmailを確認するユーザーや、MacBookやiPadでメールを読む受信者も含まれます。)
(日本語記事上の補足: 従来のヒトによる開封(赤) vs 擬似的な匿名の開封(青)、2つのチャートのうち上はブラックフライデー、下はサイバーマンデー、擬似的な開封がいずれも約40%前後)
言葉の重要性
Eメールの件名は、シャンプーに関する昔のコマーシャル「Head & Shoulders」のようなものです。つまり件名の位置付けを考える際に、「第一印象を与えるチャンスは二度とない」というという表現にはこれ以上ないほどの真実味があります。感謝祭で七面鳥のディナーを食べたあとにウトウトしていなかった人は、受信箱に大量の感嘆符や、不必要な程に利用されていた絵文字などを目にしたことでしょう。
そういったなか、例年通り件名の長さ(単語数)が開封率にどのような影響を与えるかを見てみましたが、今年も「少ないほど効果的」という古い格言が当てはまりました。開封率が最も高かったのは「簡潔な件名」で、4語以下(英単語)の場合にユニーク開封率は14%弱となりました。逆に件名の長さが10語以上になると、ユニーク開封率は低下しました。言わずもがなですが、ここでの教訓は「簡潔であること」です。ヒトの注意力は短く、誰もが受信箱の中にたくさんのメールを抱えています。そのため、本題に入り、意味のあるメッセージを伝え、壮大な内容を伝えるという主目的は本文に取っておく必要があります。次の図は、擬似的な開封率を除外し、測定可能な人間のエンゲージメントに焦点を当てています。
(日本語記事上の補足: 横軸〜件名のワード数、縦軸〜配信されたメール総数に対するユニーク開封率(擬似的な開封は除く))
タイミングがすべて
私がEメールの業界に入ったばかりの頃は、メールマーケティングでは火曜と木曜が「ボリュームの多い日」というのが常識でした。今日では、受信箱には毎日メールが流れ込んでくるように思えます。しかし私たちは、ブラックフライデーとサイバーマンデーに配信された大量のメールが、当日のどの時間帯に配信されたのかを知りたいと思いました。先ず午前0時〜明け方3時までの時間帯のスパイクが存在します。しかし、この時間帯のメールは受信箱の下方に表示される可能性が高いことを意味しています。ボリュームは午前中にかけて概ねフラット(漸減し漸増)となりますが、正午過ぎには再びスパイクし始め、夕方にかけて全速力で増加する傾向が見てとれます。
(日本語記事上の補足: 横軸〜BF/CMに配信されたメールの送信時間帯、縦軸〜BF/CMの各々の配信メール総数に対するその時間帯の割合、青色〜BF、赤色〜CM、補足〜真ん中あたりの「0:00-12:00」は「09:00-12:00」と思われます)
サイバーマンデーでもほぼ同様のメール配信が行われ、主に午後にかけて最も多くのメールが配信されました。
開封されるタイミング
メールをコンバージョンにつながる一連のマイクロディシジョン(意思決定)の視点から眺めると、メールを受け取ったお客様にしてもらいたい次の自然な行動や意思決定は、メールを開くことです。過去10年から15年の間に、ブラックフライデーやサイバーマンデーにおいては、人びとはメールに対して大幅な割引特典や相当のプロモーションを期待するように“仕込まれて”しまっています。私たちは、メールが配信されてからどのくらいで開封イベントが発生したかを調べました。特に、匿名の開封ではなく、従来のヒトによる開封に注目しました。
(日本語記事上の補足: 横軸〜BFに配信されたメールの送信および開封の時間帯、縦軸〜配信および開封の総数に対するその時間帯の割合、青色〜配信量の時間帯分布、赤色〜開封の分布、補足〜CMのデータは次の図です)
驚くことではありませんが、開封の分布は配信分布にほぼ一致しており比例していたことから、人々はその日の早い時間に大量のメールを開封していないことが示唆されます。ただし、ブラックフライデーの午後12時〜3時の時間帯は例外で、同じ時間帯に送られたメールの量に対して開封の割合が非常に多くなっています。
(日本語記事上の補足: 横軸・縦軸・青色・赤色の解釈は直前のグラフと全く同じで、こちらはCMのデータ、補足〜前のグラフはBFです)
サイバーマンデーも基本的には同じパターンが繰り返され、あまり大きな相違はありません。正午から午後9時の間に送信されたメールトラフィックは、全体の50%近くになります。
今後の重要指標はクリック
Apple社のメールプライバシー保護機構の登場により、マーケティング担当者は、受信者がどのようにメッセージに関わっているのか、そしてその関わり方がどのようにコンバージョンにつながるのかを理解するために、他の指標に目を向けざるを得なくなりました。クリックの頻度や、1つのメールに複数回のクリックがあったかどうかなど、他の指標に加えて、クリックがその理解のために最も重要であることが明らかになりつつあります。私たちは、開封後のクリックが、開封とほぼ同じ時間帯に起こるかどうかを理解したいと考えました。驚くことではありませんが、ほとんどのクリックは開封に近いタイミングで発生するという一般的なテーマが見られ、開封時に見られたパターンはクリックにもほぼ当てはまるようです。
(日本語記事上の補足: 横軸〜BFに配信されたメールの送信およびクリックの時間帯、縦軸〜配信およびクリックの総数に対するその時間帯の割合、青色〜配信量の時間帯分布、赤色〜クリックの分布、補足〜CMのデータは次の図です)
サイバーマンデーでは、クリックのパターンが少し異なるようですが、これは人々が仕事に戻ったことによるものかもしれません。
(日本語記事上の補足: 横軸・縦軸・青色・赤色の解釈は直前のグラフと全く同じで、こちらはCMのデータ、補足〜前のグラフはBFです)
また、メールが送信されてから開封されるまでの時間を把握することに加えて、メール内のコールトゥアクション(CTA)などのリンクをクリックするまでの時間も把握したいと考えました。配信されたメールのユニークな開封数を基にした開封時間の中央値は45分から59分、メッセージが開封された後のクリック時間の中央値は約12秒でした。配信側にとって、タイムセールのようなオファーに頼る場合には受信者がメールを開封するまでに平均して1時間はかかることを考慮しなければなりません。しかし、十分に魅力的なオファーを提供しさえすれば、モバイルアプリやウェブサイトへのアクセスリンクがクリックされるという望ましい結果は、かなりのスピードで得られます。
(日本語記事上の補足: 横軸〜BF(11/26)やCM(11/29)を中心とする1週間、縦軸〜開封・クリックされるまでの所要時間の中央値、青色〜開封イベント、赤色〜クリックイベント)
ギビングチューズデーで急増する寛大さ
11月の終わりには、小売店の売上だけでなく、慈善家の方々の素晴らしい寛大さも急上昇します。毎年、感謝祭の翌日の火曜日に設定される「ギビングチューズデー」は、非営利団体にとってEメールによる募金活動が最大化される日です。
非営利団体のパートナーと寄付者や企業を結びつける非営利団体であるGlobalGivingは、Twilio SendGridのEmail APIを利用して、大規模なGivingTuesdayキャンペーンを行っています。GlobalGivingは、この重要な日に寄付者を集めるために100万通以上のメールを送信しており、パーソナライズされた件名とA/Bテストにより寄付者から高いエンゲージメントが得られています。寄付者は、身近な目的に合わせたコンテンツに興味を持つ可能性が高いのですが、その証拠はデータに如実に現れています。
- ユニーク開封数: 185,800
- 平均開封率:23.64%
- 平均クリックスルーレート(CTR):1.58%
- 集まった資金:305,583.16ドル(3千万円超; Eメールキャンペーン10個の総計)
- ユニーククリック数: 12,526
- 平均的な件名の長さ(ワード数): 8
GlobalGivingの今年の戦略は、パーソナライゼーションのバランスとその効果を見る実験で、寄付者の寄付履歴に基づいて、特別な件名、プレビューテキスト、本文テキストで寄付を促すものでした。一連のA/Bテストでは、このカスタマイズされたテキストが、組織の最も価値のある寄付者セグメントに与える影響を測定しました。この戦略により、GlobalGivingの2021年の全体平均と比べて、開封率が25%、CTRが5%も高くなりました。この非営利団体が最も高いパフォーマンスを示したメールは、パンチの効いた件名と、ヘッダーに埋め込まれた目を引くカウントダウンタイマーを特徴とする、最後の寄付募集メールでした。このメールは、30%近い開封率と2.1%のCTRを達成しました。
COVID-19がきっかけとなった2020年の寄付活動との対比で、GlobalGivingの2021年の結果は、以下のように前年比でわずかな減少となりました。しかしながら、通常パターンだった2019年の募金活動の結果と比較すると、2021年は30%増となっており、今年のホリデーシーズンはこれまで以上にチャリティ活動が活発になっていることが分かります。
(日本語記事上の補足: 横軸〜昨年2020年(青色)と今年2021年(赤色)、縦軸〜集まった資金(単位=米ドル))
おわりに
メールマーケティングを取り巻く環境は変化しています。この変化の中には、確立された指標をマーケターが再検討し、エンゲージメントを評価する新たな方法を見つけることが求められているものもあります。他の変化は進化的なもので、BIMIがGmailで一般的に利用できるようになったことでメールの受信箱が進化し、より使いやすく、視覚的にも魅力的になっていることを示しています。Eメールは、1971年に初めて送信されて以来、インターネット上で進化してきた多くのサービスやプラットフォームを支え力を発揮する、ダイナミックで進化したメディアです。そして今年、Eメールは50歳の誕生日を迎えました。そうです、Eメールは半世紀の節目を迎えたのです!私たちはこれ以上ないほど興奮しています。
今年のブラックフライデーとサイバーマンデーでは、Twilio SendGridを通じて両日で約140億通のメールが処理されました。この驚異的な量は、世界的なパンデミックから2年目を迎えた今、私たちが少しでもつながりを感じられるようなコミュニケーションを提供するための活気に満ちた重要なチャネルとして、世界中の企業がEメールに投資していることを示しています。
お客様のEメール配信プログラムについてお悩みがあれば、遠慮なく弊社までお問い合わせください。