Twilio Championsインタビュー: Doerに聞く - 西 康太郎さん
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デベロッパーエバンジェリストの池原です。昨年11月に始まった「Twilio Championsインタビュー: Doerに聞く」の5回目を2021年03月10日(水)に配信しました。
今回のChampion: 株式会社サイバーエージェント 西 康太郎さん
今回は株式会社サイバーエージェントの西 康太郎さんにお越しいただきました。西さんは現在、同社でAI事業本部 DX本部 小売セクター ロボットサービス事業部にエンジニアとして所属されています。そんな西さんにTwilioとの関わりについてお話しいただきました。
Twilioとの出会い
西さんがTwilioと出会ったのは、学生時代に参加されたハッカソンにTwilioがスポンサーとして協賛していたことがきっかけでした。当時は「電話を使うAPI」としてTwilioを認知していたものの、普段電話を使うことが少なかったためハッカソンでは利用しなかったそうです。
そして数年後、前職でコールセンターアプリケーションを開発する際に、本格的にTwilioを使い始めることとなりました。
Twilioの魅力
電話の使用頻度は個人によって差がありますが、電話はPCや携帯、スマートフォンが普及する以前から我々の生活を支えるインフラとして利用されてきました。
Twilioを触る前の西さんにとっての電話は、ただ遠くの人と話すことだけに特化したツールであり、使い古されたデバイスという印象でしたが、Twilioを使うことで自動音声応答(IVR)や、カンファレンスコール(多人数通話)、クイズの作成など、「音声」を用いたさまざまなソリューションを「簡単に」作れることがわかり、見方が大きく変わることになりました。
さらに、他のコミュニケーションデバイスと比べ、世代を問わず誰もが保有している、誰でも使える点についてもあらためて強みを感じたそうです。
Twilioを業務で活用し、コールセンターに組み込み
前職で携わったサービスはWebサイトのフォームからの工事の問い合わせについてコールバック(折り返し電話)をかけ、そこでのヒアリング結果をもとに対応できる工事業者を紹介する、というものでした。
そのため、コールセンターの業務の大半はアウトバウンドコール(外部発信)でした。この外部発信はオペレーターが手動で架電していましたが、立ち上げ前に想定していたほど応答率が高くないという課題に直面することになりました。当時はコールセンターを立ち上げた直後で人員が少ないにもかかわらず、多くの問い合わせと未応答の累積で架電対象リストは膨れていき、応答率によっては一人のオペレーターの架電量が一日あたり100件を超えることもままありました。
いくら電話をかけても無応答という状況について西さんは、「当時のオペレーターの目が死んでいました。」とたとえられていましたが、何度架電してもつながらず、タスクだけが積み上がって行く状況ではオペレーターさんのストレスがかなり高かったであろうと想像できます。この状況を改善するため、業務課題に最適化した架電システムを開発することを検討し、Twilioの導入に踏み切りました。
外部発信を自動化
構築したシステムでは対象のリストをCRMから読み込み、Twilioを用いて架電します。指定された時間内で応答がなければ自動で履歴を記録し次の対象者へと移っていきます。
オペレーターは応答者が現れるまで別の業務に時間を割けるようになり、また、「果たして今回は出ていただけるだろうか」といった精神的な重圧も少なくできました。ベースの生産性が上がったほか、架電ログを活用することで応答がない架電先へ過度に架け過ぎることを防ぐ機能を入れるなど、オペレーションの質の向上につながる取り組みも行うことができました。
関連リソース: 株式会社SpeeeのTwilio導入事例|Twilio - KDDI Web Communications
障害発生時のアラートコール
現職ではTwilioをメインで使用することは少なくなったものの、システム障害発生時のアラートコールには引き続きTwilioを利用いただいています。
西さんが所属しているロボットサービス事業部ではコミュニケーションロボットを使ったサービスの研究開発などを行っており、ロボットを実際の店舗に設営し顧客対応を行う実験などを実施しています。実験中にトラブルが起きた場合は迅速な対応が必要であり、遠隔地から対応できなければ現地に赴いて対応するケースもあります。第一に重要なのはトラブルにすぐ気付けることです。エラーをチャット経由で知らせる仕組みなどはありましたが、少人数のチーム体制ということもあり、メンバー全員へ確実にトラブルを伝える方法が必要だという課題感がありました。
そこで、トラブルを検出した際にチームメンバー全員の電話を鳴らす、いわゆるアラートコールの仕組みをTwilioで実現しました。更に、電話発信だけで終わるのではなく、カンファレンスコール機能を利用し、アラートコールの応答者同士を繋いで音声会議をそのまま開始できるように工夫されています。
このような仕組みにすることで、トラブルに気づいた人同士がすぐに状況を確認しながら対応を話し合うことができ、現地に向かうべきかを判断したり、調査などを効率的に分担することにも役立ちました。
実装の詳細についてはこちらで説明されています。
障害アラートコール×多人数通話接続という仕組みを思いついたのでサーバレスで実現した
Twilio Championsプログラム参加への経緯と開発者へのアドバイス
インタビュー後半ではTwilio Championsプログラムについてもお話しいただきました。開発者コミュニティを通じてTwilioの知見を得た経験から、ほかの開発者にTwilioのおもしろさを伝え、また、ご自身と同じような壁にぶつかっている方の支援になればというお気持ちで情報を発信いただいています。
それらの活動の結果としてTwilio Championsプログラムにご参加いただくことになりました。ちょうど転職の時期と重なってしまったため活動が減った時期もあったそうですが、前述のアラートコールのようにTwilioをご活用いただいての知見を共有いただき、またこれからも知見共有にご協力いただけるというお話をうかがえ、日本を担当するエバンジェリストとしてたいへんありがたく感じました。
また、Twilioに対しては製品ドキュメントに関わるご提言をいただいています。現時点では日本語と英語が混在しているページが多いため、混乱してしまうというご指摘をいただきました。この点については弊社のドキュメントチームが新たな取り組みを開始していますので時間とともに改善していければと考えています。
さらに、カンファレンスコールにおける自動音声アナウンス(音声bot)を簡単に実現できればというご意見や、感情表現を持つ音声合成エンジンを提供してほしいというご要望もいただきました。双方とも作り込むことは現状でも実現可能ですが、標準機能で提供できると利便性が高まると個人的にも感じました。
最後に、これからTwilioを使い始めようとされる開発者の皆さんにはぜひ、TwilioJP-UGが提供するSlackへ参加し、積極的に質問することをアドバイスいただきました。Twilioをこれから使いたいとお考えの方、ぜひ、TwilioJP-UGにご参加ください。
まとめ・次回予告
今回は音声通話機能を特に利用いただいている西さんにいろいろなお話を伺えました。インタビュー全編についてはこちらよりご覧いただけます。
西さん、今回はお時間を頂戴しまして誠にありがとうございました。
次回は2021年04月14日(水)にKDDIウェブコミュニケーションズの高橋克己さんにお話を伺っています。こちらについても近日中にリポートとして記事を公開したいと考えています。ぜひ、ご期待ください。
関連リソース
- 関連リソース: 株式会社SpeeeのTwilio導入事例|Twilio - KDDI Web Communications
- 障害アラートコール×多人数通話接続という仕組みを思いついたのでサーバレスで実現した
- TwilioJP-UG
- TwilioJP-UG Slack